山白朝子という作家を知っていますか?
切なさや儚げのある幻想的な作風が特徴のホラー作家です。
今回は山白朝子「私の頭が正常であったなら」のみどころと感想、おすすめポイントを紹介していきます!
山白朝子とは
本名 : 安達寛高 1978年(昭和53年)10月21日にち生まれ
福岡県久留米市で生まれ16歳で「乙一」名義で執筆した小説「夏と花火と私の死体」でジャンプ小説大賞を受賞し有名に。
覆面作家としても有名で山白朝子以外にも「乙一」「中田永一」「越前魔太郎」「枕木憂士」としてこれまでに短編長編全て合わせて150作品ほど発表しており、乙一名義では「ZOO」「君にしか聞こえない」「暗いところで待ち合わせ」「GOTH」中田永一名義では「くちびるに歌を」「百瀬、こっちを向いて」「吉祥寺の朝比奈くん」などが映画化されています。
また近年は本名である「安達寛高」名義で映画監督や脚本家としても活躍しており「ホッタラケの島」「ウルトラマンジード」「シライサン」「サマーゴースト」など数々の有名作品にも携わっています。
みどころ
全編を通してホラー要素とともにどのエピソードも「喪失」がテーマに描かれているので、全体的に暗いです。
震災で妻と子供がいなくなったり、虐待の中で健気に生きる子供だったり、そんな救いようのないような悲しみを漂わせながらも。ふとしたきっかけで最後には希望を見出そうとするエピソードが多いです。
このふとしたきっかけがホラーだったり不思議な出来事だったりします。
ホラーと切なさ、ミステリーさまざまな要素が盛り込まれた8つの短編集です。
読後は心にぽっかり穴が空いたようななんとも言えない気持ちになります。
収録作品のあらすじと感想
「世界で一番、みじかい小説」
ある日突然家の中でおじさんの幽霊が見えるようになった夫婦の話。
おじさんの特徴から原因を突き止めてくが、最後はある事実が発覚する。ミステリー要素強めです。
「首なし鶏、夜をゆく」
これはもう切なかった…。
主人公が虐待を受ける女の子のある秘密を目撃してしまうことからストーリーが展開されていきます。少女が空腹を抑えるためにビー玉を飴玉の代わり舐める描写や、主人公の家族に心を開いていく様子、同じ秘密を抱える二人が仲良くなっていく過程が儚げで胸を打ちます。
最後の展開は切なくてなんとも言えない気持ちになりました。
「酩酊SF」
お酒を飲んだら少し先の未来が見えるカップル、それを利用してお金稼ぎをするのだが、自分が血だらけで倒れている未来を見てしまい…
最後はなるほどと思える展開でさすが乙一だなと思いました。
「布団の中の宇宙」
スランプで小説がかけなくなった男が中古の布団を買ったことによって不思議なできごとが起こるようになり…
これは個人的にはオチも微妙であまり面白くありませんでした。
「子どもを沈める」
高校時代の仲良し4人組グループが大人になり相次いで自分の子供を殺していくことから始まります。
主人公は当時の友人が残した手紙から過去に犯した過ちが原因で呪いが発生していることを知ります。
「あなただけは子供を産まないで」というメッセージを受けた主人公。しかしその手紙を読んだ頃にはもう遅く、主人公はすでに身篭っている状態でした。
罪を認めることによって再生をしていく物語。
「トランシーバー」
津波で妻と息子を失い、お酒に溺れ絶望の中を生きる主人公、ある日息子の遺品のおもちゃのトランシーバーから声が聞こえてきて…
うんち、おっぱい、ちんちんを好んで使う3歳の子供と常に酩酊状態の主人公の日々が始まります。
「パパー!あそぼ!おっぱい!」にこんなに感動するとは思いませんでした。
「私の頭が正常であったなら」
離婚した夫が自分の子供を連れ去り心中したことからストーリーが始まります。
徐々に頭が狂っていく主人公の様子と、それを憐れみつつ見守る周囲の家族の関係を淡々と描き、
最後にはいろんな意味の「救い」が残されていて感動です。
「おやすみなさい子どもたち」
不慮の事故で死んでしまった主人公、目が覚めたら天使の世界だった。
天使として生きていく主人公はたくさんの人間の人生に寄り添いながら生きる決断をするのだった…
完全に独立した話ながらもこれまでの7つの短編を包括的にまとめた作品になっていて、これまでの7つの作品がどんな結末であれ、「それでよかったんだな」と思わせてくれる。
まとめ:面白いので読んでほしい
以上です。
どの短編集も面白いのですが特に「首なし鶏、夜をゆく」「トランシーバー」は面白かったです。
独自の世界観にハマる人はとことんハマると思いますので読んでみてはいかがでしょうか。
その他の乙一作品についてはこちらから↓
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