垣根涼介はとても好きな作家の一人です。
10代の頃ヒートアイランドを読んでハマり、以来ずっと垣根涼介の作品を追いかけています。
ここではクライムノベル好きや歴史小説好きにおすすめの垣根涼介作品9冊を紹介します。
著者プロフィール
2000年 – 「午前三時のルースター」で第17回サントリーミステリー大賞読者賞受賞。
2004年 – 『ワイルド・ソウル』で第6回大藪春彦賞受賞、第25回吉川英治文学新人賞受賞、第57回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)受賞。
2005年 – 『君たちに明日はない』で第18回山本周五郎賞受賞。
2005年 – 長崎県県民表彰特別賞受賞。
2013年 – 『光秀の定理』で第4回山田風太郎賞候補。
2016年 – 『室町無頼』で第7回山田風太郎賞候補、第156回直木賞候補。
2018年 – 『信長の原理』で第9回山田風太郎賞候補。
2019年 – 『信長の原理』で第160回直木賞候補。
垣根涼介作品の特徴
とにかく登場する男がかっこいいです。
著者の書く登場人物は決して善人というわけではなく、どちらかというと社会の枠組みから外れた人物が多いのですが、常識やルールを疑い自分なりのルールや哲学に従って生きている男ばかり出てくるのででそこに惹かれます。
ただ社会から外れたわけではなくそこに行き着くまでの過程に説得力があり、生まれてくる時代や環境が違うだけでこうも善悪の常識がぬり変わるのかと思い知らされる場面も多々あります。
著者自信、作家生活が10年経ったら歴史物に挑戦すると公言しているように、ここ数年は歴史小説のみとなっております。
しかし男を描くのが上手い著者が男だらけの武将や時代を書くのでこれがまためちゃくちゃ面白いんです。
ここにあげる9つはどれを読んでもハズレなしなので自信を持っておすすめできる数少ない作家です!
垣根涼介のおすすめ作品01 : ヒートアイランド
渋谷を拠点にするギャングチームVSブラックマネー専門の窃盗団VS敵対する二つのヤクザ組織、4者が金と利権をめぐり駆け引きを繰り広げる様を描いたクライムノベル。
それぞれの思惑が複雑に絡み合い、手に汗握るスリリングな展開が繰り広げられます。
4者が交わる後半は怒涛の勢いでストーリーが展開していきページを捲る手が止まらなくなります。
続編として主要人物のその後の成長が描かれる「ギャングスター・レッスン」「サウダージ」「ボーダー」とへと続いていきます。
垣根涼介のおすすめ作品02 : ワイルドソウル
国家など、所詮は巨大な利害が絡み合った有機体にしかすぎない。そしてその利害はいつの時代にも無知な大衆向けの甘ったるいオブラートに包まれ、その時の情勢に応じて変化してゆく。押しつぶされてゆく少数の人間のことなど見向きもしない。
ワイルドソウルより抜粋
戦後日本の食糧難からの人減らし政策として打ち出されたブラジル移民計画。
楽園と言われたどり着いたのは草木も育たない枯れた土地での想像を絶する暮らしだった。
過酷な環境を生きた子供たちによる日本政府への復讐劇を描く、ものすごく読み応えのある一冊です。
重めのストーリーながら南米出身の主人公たちの明るさもあってテンポよく読めます。
作中で描かれる戦後のブラジル移民政策は、過去の日本で実際に起きた出来事なので読んでいて考えさせられる話でした。
垣根涼介のおすすめ作品03 : 午前三時のルースター
著者の処女作にしてデビュー作。
ベトナムで失踪した父親を探す15歳の少年と、その旅に同行する旅行代理店勤務の主人公の視点から描かれるハードボイルド作品。
テレビに一瞬映った父の姿を頼りにベトナムで捜索をする一行。
ギャングによる妨害や数々のトラブルに遭いながらも、やがて真相に近づいていく。
そこには予想外の事実が待ち受けていた。
登場人物がみんなかっこよくて痺れます!
垣根涼介のおすすめ作品04 : 真夏の島に咲く花は
楽園と呼ばれる国フィジーで実際に起きたクーデーターをテーマに、小説として描かれた作品。
お金がなくても物々交換で幸せに暮らしていたフィジー人だったが、頭の良いインド系移民、商売上手な中国人が移住してきたことによって強制的に資本主義社会への参加を余儀なくされ、やがて考え方や文化の違いから対立することになり….
多民族が共存していく事の難しさも伝わる作品。
垣根涼介のおすすめ作品05 : 月は怒らない
壊れている人間は基本的にだが周囲にいる親しい人間を幸せにできない。少なくともその確率は非常に低い。なぜなら、自己陶酔という意味ではなく、本当の意味で自分を愛せない人間は、最終的にはその親しい相手をも愛することができないからだ。
月は怒らないより抜粋
どこか壊れている女性とそれに惹かれてどこか壊れている男たちの再生の話。
ストーリー自体はこれまでの垣根作品と比べて地味だが、各所に出てくる壊れている人間の描写が細かく胸を打つ作品。
格闘家の瞬きの少なさとかよく描写しているなぁと思います。
個人的にすごく好きな作品なので個別に記事を書いています。
「月は怒らない」あらすじと感想【不遇な環境で育った二人が手にする幸せとは】
垣根涼介のおすすめ作品06 : 光秀の定理
著者初の歴史小説。
本能寺の変で有名な明智光秀を題材とした作品。
新九郎、愚息、光秀が主人公として、それぞれ置かれた立場や環境が違う中で「この世の理」を見つけ出していく物語です。
能力の高さゆえ出世していきプレッシャーの中を生きる光秀、能力は高いながらも自由に生きる愚息と新九郎。光秀が大出世を遂げ孤立していく中でも変わらない3人の友情はずっと見ていたくなります。
これも好きな作品なので個別に記事を書いています。
垣根涼介『光秀の定理』あらすじとみどころ
垣根涼介のおすすめ作品07 : 室町無頼
応仁の乱前夜の、無法地帯の京都を舞台に腐敗した幕府を相手に一揆を起こすまでを書いた作品。
幕府に潜り込み内側から崩そうとする骨皮道賢、民衆から慕われ一揆を企てる蓮田兵衛、15歳で天涯孤独になり二人に拾われ後に最強の武器となる才蔵、魅力溢れる3人の男を軸にストーリーが展開されていきます。
ちなみに骨皮道賢、蓮田兵衛は実在の人物で蓮田兵衛は日本で初めて一揆を起こした人物として名を残しています。
登場人物全員がカッコいい著書の描く男らしさが凝縮された、一度読み始めたら止まらなくなる痛快で骨太な作品。
特に主人公の修行シーンは見所です。メキメキと強くなっていく主人公は後半幕府相手に暴れまくります。
垣根涼介のおすすめ作品08 : 信長の原理
うつけ者と呼ばれ家中で孤立していた信長、幼少期に蟻の観察をしていた彼はある法則に気が付く。
働き蟻の法則をテーマに法則にいち早く気づき成り上がっていく信長とその法則に抗おうとする姿を描いた作品。
ちなみに「光秀の定理」では描かれなかった信長が光秀に寄せる信頼と、光秀が裏切るきっかけになる出来事が本作では描かれているので光秀の定理を読んだ方はこちらも併せて読んでみることをおすすめします。
垣根涼介のおすすめ作品09 : 涅槃
斎藤道三・松永久秀と並び戦国三代梟雄と呼ばれる宇喜多直家の生涯を描いた作品。
上巻では自家の滅亡、父親の自殺から商人の家に引き取られ、孤独な幼少期を過ごした直家が周りの人間に助けられ成り上がるまでを描き、下巻では権謀術数の渦巻く戦国時代を武士として生き抜く様が描かれています。
900ページ以上の超ボリュームですが、商人の家で育った直家の武士としての立ち回り方や、不遇な幼少期からくる世の捉え方、他人への接し方が一貫していてこの人物がどうやって成り上がっていくのか、気になって一気に読めてしまいます。
敵に対しては徹底的にドライだが、身内に対しては底抜けに優しい直家の人間味とそれを取り巻く周りの人間がとても魅力的です。特に作中に出てくる善定、黒田満隆、紗代、柿谷との関係はどれも感動します。
下記で個別に感想を書いています。
垣根涼介「涅槃」が面白すぎた
まとめ:どの本から読んでも面白い
垣根涼介の本は他にもたくさん出ているのですが、その中でも特に面白いと思った作品の紹介でした。
男が読んだら間違いなくハマると思うのでぜひ読んでみてほしいです。
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